6月2日の日経新聞に掲載された星野リゾートの星野社長による、日常生活に必要な旅に関する記事を興味深く読みました。
コロナ禍を経て旅の目的が変わる
大局観のある示唆に富む記事です。新型コロナウイルスの影響もあり、旅の目的が変わると言う点が最も興味深かかった部分です。
旅の目的も変わってきます。これまでは「きれいな景色が見たい」「アクティビティーを楽しみたい」などが主な旅の目的でした。これからは、自粛のストレスや恐怖感からの解放が重要なテーマです。(外出自粛の緩和を受け)今後はゆるやかに需要が回復してくるとみています。しかし、回復までには3つの段階があると思います。
まず最初に戻ってくるのは、周辺地域を旅行する「マイクロツーリズム」です。
確かに緊急事態宣言の頃から、近所を散歩しながら散策する人が僕の周りでも増えたように思えます。「こんなところまで来たことなかったね」と話しながらゆっくり歩く夫婦をよく見かけました。遠くにいけない制約によって、改めて近くの生活圏の中にある名所が浮かび上がってくるなんてこともありますね。
僕自身、30代を海外転勤や留学で根無草のようにフラフラと旅するように生活した結果、旅のような要素は日常の周辺にもあることに気がつき、それ以降あまり遠くへ行くよりも、日常の周辺を探索することが楽しくなりました。
それに、自粛のストレスや恐怖感からの開放感を求めて旅をする、と言うことは、その中にはリモートワークによって疲弊した気持ちを回復するための手段にもなると思います。
隠れ名所を持つ地域に住まう
その意味では、日常生活の少し外側を旅して楽しいところに住むのがよいでしょうね。地方への移住が増えるのではないか、と言う理由にはそれもあると思います。
しかし、マイクロツーリズムの資産が豊かなところはどこでしょうか。限られた地区を指すのでしょうか。
僕はそうは思いません。今、僕やあなたが住んでいるところでも、知らないだけで興味深い資産たるものはあるのではないでしょうか。
そんな予感があったのは、ロンドン留学時代に住んでいた旧港町の風景に魅せられて毎日のようにランニングしながら眺めていたからです。そのときに、大学院のミニプロジェクトで作ったのがこちらのショートムービーです。
南東ロンドンは、50年も昔でしたら波止場の猛者たちが闊歩する、労働者の街であり、留学生がわざわざ住むところではなかったと思います。
時を経て今は港の機能はなく、あるのは趣のある建物を活用した高級マンションやスタジオです。ただロンドンがすごいなと思うのは、その名残を上手く残していることです。町の資産として感じることができる。それはそれは素晴らしいと思いました。歩いたり、走ったりするとそれがよく感じられます。
隠れ名所を記録して残す
あえて名所ではないところを訪問して記録していくことが、今だからこそ面白いかもしれません。
今住む品川区にもあります。これは、鎌倉時代からあり東海道より古い旧道中原街道にある庚申塚。江戸時代は、ここで休憩してたらしいです。
星薬科大学の正門にある銀杏並木は地元の人と学生は知っている美しく歴史を感じる佇まい。
戸越銀座商店街に2018年ごろまであった桜の老木。和菓子屋さんのお庭にありました。坂の上から眺めると、老いてもう派手には咲かない桜でしたが、とても趣がありました。今はお店とマンションが立っていてありません。
まだ断片的ですが、こういった一つ一つを自分の感覚を頼りに集めていくと、面白いローカルのツーリズムガイド兼写真集ができるかもしれませんね。ハッシュタグやSNSも連動すると、より面白いそうです。ちなみに、Youtubeに上げていたロンドンの波止場の動画には約100の元住人と思われる方からコメントがついています。思い出話や現場を憂う声もあったりして、公開しておいてよかったと思ったものです。
僕は葉山に移ったら、そういった自主制作プロジェクトもやってみたいなと考えています。日常の視点をちょっと変えてくれる面白い物事を美しくユニークに記してみたいものです。