移住前に作文で家族の考えを見える化する

引越しをしてから、複数の友人知人から、家づくりについて質問をいただきました。そこで今回は、家づくりの前提としてとても重要な理想の住まいについて夫婦の考え方を共有しあったり、他者にそれを伝えるのに便利な文章作成について書いてみたいです。

「引っ越しに対する思い」を伝える二つの文章

理想の住まいを緩く考えはじめて5年がかりで、実行に移すことができました。

僕の中で、本当によかったと思えるのは、引っ越して3ヶ月間、ことあるごとに妻や子どもがよく「本当にここのお家はいいね」と話していることです。この先のことはわかりませんが、現状大満足だね、という話をしています。この満足には、関わってくださった不動産屋さん、設計士さん、工務店さん方への感謝と共に、一つ大切な前準備があったことを改めて思い出します。

私たちは、家族の思いを具体的に共有できるように二つの文章を作成しました。

一つは「理想の住まい」、もう一つは「暮らしのストーリー」です。

移住や引っ越しには、家族の考え方を徹底的に議論してお互いが共有している必要があると思います。家族皆の考え方が、完全に一致するのがいいでしょうが、なかなかそうもいかないでしょうから、まずはどこが一緒でどこがずれているのかを認識し合うことが大切

うちの場合は、割と似た部分があり、どちらかというと似ているところを再確認していくプロセスになったと思っています。

あとは、やはり不動産屋さんや設計士さんといったパートナーを探す上で、とても大切なドキュメントになると実感しています。この文章を読んでもらったときに、共感してもらえるのかどうかで、土地探しや設計に大きな影響が出ると考えます。相性の問題でもあるので、反応があまりない方にお願いするのはやめた方がいいです。

最初に書くのは「理想の住まい計画書」

こちらの二枚分が、土地探しに向けて書いたものです。実は、この文章を書いた方がいいと思ったきっかけは、鎌倉にある不動産屋さんとのやり取りをさせてもらった際に各項目について尋ねられたのがきっかけでした。

それまで議論してきたことを、簡単に文章化してみました。作業は、Google Docsで書いて妻に見せてフィードバックをもらい、加筆修正を続けて完成。ポイントは、家族全員の意見が必ず散りばめられていること。それと出来たら家族写真かイラストをつけておくと、よりどんな家族がこの理想の住まいを考えているのか、より伝わると思います。

こうすることで、二人でまずは目指すべき方向性については、納得して探しはじめることができました実際、住みはじめてからも、思った通りのところが見つかったね、という会話をしていますので、この段階での計画は現時点では悪くなかったと言えると思います。

議論のポイントは、自分たちのライフステージによってかなり違うはずです。私たちのような30〜40代の夫婦で子どもがいると、特に教育については意見が分かれるところではないでしょうか。我が家は、自然や地域からまずは学びのきっかけとなる刺激が多いことが大事だと二人とも考えていたので、特別いい学校が近くにあるから、というより自然の多い地域が学校くらいにこの段階では考えているということを確認しあっています。

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「理想の住まい計画」書き起こし

 0. 家族構成
• Shintaro(42才)会社経営・リサーチャー
• 妻    (39才) 大学講師、写真家
• 長男  (1.7才) 保育園児
• ヤンマール(雄猫・5才)

1. 湘南エリアでお住まいを探される理由やきっかけなど
● 都内での暮らしは便利ですが、今の生活スペースがやや狭いと感じています。また、都内は場に余白が少なく、たとえばぼんやり考え事をするにしてもいつも何か情報が目に入ってきます。夫婦ふたりともクリエイティブな仕事をしており、海や山があって視界が開けているところに暮らすことは、心身を整えるベースにもなると考えました。
● 妻も私も、複数の友人が逗子や葉山に暮らしており、訪れた時に海と山の両方がありそれでいて都内に用事で出るときにも可能なこのエリアがよいと感じてきました。逗子は新宿、小坪、葉山は一色の友人宅に遊びに訪れたことがあります。ハイランドには一度住宅見学で訪れました。新宿では友人の子(芸術大学に進学した高校生)が、海辺で母親と共に集めた貝殻や逗子の海の色をベースに服をデザインしていたのを見て、暮らしの中から豊かなインスピレーションが溢れている場であることを実感しました。
● ドキュメンタリー映画「うみやまあひだ」で、人が身体で感じる音が体調や気持ちに及ぼす影響が述べられており、音を意識した暮らしの拠点を考えたいと思いました。
● 循環型社会や持続可能社会が言われるようになっていますが、生活の中でその流れが見えるようになっていなければ、実感が持てません。家族が暮らす上で、ゴミは循環するものと循環できないものがあることが堆肥づくりなどからもわかる場をつくりたいです。

2.こちらで実現したいライフスタイルや普段の休日の過ごし方
自宅や庭で過ごす豊かな時間。現在の住まいでは、休日を自宅にこもって過ごせば一日を無駄にしたと思う残念な気持ちになることもあります。これはマンションの4Fで隣の建物に視界が遮られる空間で暮らしていることや、庭もないことがあります。近所には武蔵小山や戸越銀座の商店街があり、出かければそれなりに楽しいのですが、混雑していますし、何かを得たいと思うと、それは常にお金を支払う必要があったりします。湘南地域に暮らすことで、特にどこかに出かけず家で過ごす日であっても、いい休日だったなあと思えるものにしたいです。たとえば、以前、小坪に住んでいた友人を訪ねた時、鎌倉の海岸でバーベキューをして食べたご飯は、最高に美味しかったです。

「それから、鎌倉に越したときにいいなと思ったのは、1日家にいても残念な気持ちにならないことですね。東京では「あー、1日家にいちゃったなー」って損したような気分になるんですが、それがなくなったんですよ。環境のせいなのかな。」(無印良品の家に会いに、KIKIさんコメントより)

食べるものの数%でも自分で育てたり獲ったりしたい。「妻の地元でもある愛知県春日井市にあるニュータウンに暮らしながら、畑を作り雑木林を育てる津端ご夫妻を追ったドキュメンタリー映画「人生フルーツ」を見て、ご夫婦の家庭菜園に憧れを持ちました。また実家の愛知でも自家製の野菜を家庭菜園で育てており、美味しいだけでなく、身体を動かすことでデスクワークとは違った刺激があるのではと思っています。小中学生のころ熱中していた釣りもできればと思います。
● 職住近接ライフ。自宅でも集中して仕事でき、ときにコワーキングスペースのようなところで仕事もできるライフスタイル

3.絶対外せない条件など(優先順)
1.  庭スペースがほしいです。できたら家庭菜園を作りたい。難しければ、近くに借りたいです。(庭を持つ場合は、土地全体で50坪程度は必要でしょうか?)
2.  陽当たり、風通しの良いところ。ある程度の湿気は仕方ないかもしれませんが、例えばかびが生えて困るような湿度のたまりやすいところや陽当たりが悪いところは避けたいです。
3.  災害(津波、がけ崩れ)のリスクが低い
4.  保育園や小中学校までの距離が遠すぎず徒歩圏内あるいは自転車。
5.  最寄り駅まで徒歩でもなんとか歩ける距離。徒歩20〜25分まで。
6.  人間も猫も暮らしやすい広さと自然が身近にある生活。具体的には、窓からの風景にすぐとなりの家があるような感じは避けたいです。注文住宅を検討中です。窓からの借景は意識したいです
7.  車庫スペース:今は車はないですが引っ越したら入手する可能性高いため。

終わりに

今回は、私たちが、理想の住まいを求めて書いた「理想の住まい計画書」について書いてみました。

結果として、書いたことはほぼ妥協なく実現できました。でも、実現できなくても、こうして求めていることを形にして、納得して決定し次に進めることが何よりも重要なのだと考えます。

次回は、新居の設計に向けての文書についても書いてみたいです。