聖獣と害獣の境界

VOCA賞の作品。永沢碧衣さん《山衣をほどく》。

東北リサーチで、2021年に秋田県阿仁にフィールドワークに伺った際に、阿仁マタギの鈴木さんの弟子に20代の若手が3人いると伺いましたが、そのお一人が受賞。2023年2月に伺った際には、仲間の一人が賞をもらって東京で展覧会をする、とおっしゃっていました。

聖獣と害獣に引き裂かれた熊。ご自身で狩られた熊をモデルに、そして油や毛などを素材として使って描かれている。

インタビューで永沢さんは、熊と人間を重ねて考える、と述べています。山の中では、熊の方が賢く、同等だという眼差しをむけているそうです。また、熊を狩るという行為を通して、山全体に生きるものたちの生死の循環について考えるようになり、自然災害を含めいつか自分たちが死ぬ番が回ってくると言った視点でも語られています。
この絵に出会うと、共生と共死について考えが及びます。「なめとこ山の熊」を再読したくなる作品です。展示は30日まで。