戸越銀座・和菓子処倉田家さんの桜

戸越銀座商店街は、谷底のように両方を小高い丘に囲まれている。

商店街につながる坂は、5坂として区のWEBでも紹介されているが、なかなか見通しがよくビルの5〜6階くらいからの眺めであろうか。春になると、その中のひとつ宮前坂から一本の桜が目立つ。

坂を降りて再び登った先にある和菓子屋さんの庭先にある老木で、お店の方に聞くところでは2016年の時点で樹齢およそ60年とのこと。ここ数年は、すっかり花をつける量も減ったと仰っていた。品川区保護樹木の札がかかるこの老木の姿を2015年からわずか3回だけ満開の状態で楽しませてもらった。

過去形なのは、この桜は店舗ごと立替なのか無くなってしまったからである。

2018年の夏頃通りかかったら、更地になっていて驚いた。

もう春の坂の上から派手目はないが確かに咲いていた桜は見られないのだなと残念に思うと共に、あのときHasselbladを構えてじっくりと撮影してよかった。土地の持ち主には、持ち主の事情があってそうされたのだ。

染井吉野の木の寿命は通常60年前後らしいので、戦後植えられた木々は植え替えの時期にも来ている。確か、昨年あたり洗足池の桜もかなりの本数が植え替えられていた。桜同士で世代交代もあれば、土地の用途が変わる変遷もある。

風景は消えてしまうけれど、こうして残せたことで姿を偲ぶことができる。