五反田駅のすぐそばにある古く、謎めいた和旅館・海喜館。ビルが多い周辺だが、ここだけ昭和初期か大正の佇まいが残る。営業してるようには見えないが、綺麗に整えられて季節の花が美しい。
新緑の季節を経て、木々が館を守っているように見える。
ネット上を検索するとでてくる体験記には、予約をとるのに女将から宿泊の目的を執拗に尋ねられるなど高いハードル(?)を超えないといけないらしいが、一旦泊まれれば中の調度品がとてもすてきとのこと。ここを通る度に気になるスポット。
2015年あたりにはまだ料理人らしき方が出入りするのを見た記憶があり、機会があれば、古い仲間と語りの場を持ちながら一泊したいと思っていた。
しかし、2017年に地面師による土地詐欺問題が発生し、この旅館が再び表側にひっぱられることになる。このブログにもにも1日100件を超えるアクセスが一週間近く続いた。
報道記事によると、土地は約600坪あり、現在は営業されていない。事件後、入り口にはバリケードがかかり、2018年末現在塀にもビニールシートがかかっている。
そのような趣とは相反する装飾が施されてしまったため、かつて花街にあった古き旅館の佇まいは今は外部から伺うことはできない。ときおり、ニュースで見た人々がバリケードの前で記念写真を撮っている。しかし、その旅館の姿からは赴きが欠けている。今となっては、ああ素敵だなと思えたときに写真に収めておいてよかった。
昨今、五反田にはITスタートアップが集まっている。TOCや駅周辺のビルにそういった新興企業のオフィスが入っている。こういった古い資産を古民家オフィスにしたら、都会の真ん中とは思えない時間の流れの中で働けたりするのではないかと思うが、おそらく遠くない将来に高層ビルになってしまうかもしれない。それとも、ほとぼりが冷めてまたひっそりと都市の一部を形成する存在に戻るかも知れない。
そういえば、2008年あたりまで東急池上線五反田駅のすぐ脇に、ソープランドの大きな看板を掲げた昭和初期に建てられただろう古いビルがあり、壁にペンキで見習い募集中、とあったのを通勤の度に目にしていたが、今ではきれいなガラス張りのビルである。五反田の印象を変えるのに一役かっているだろうが、あのいかがわしくい風景は昭和のいい味がでていたなあなどと通り過ぎる僕などは無責任にも思ってしまう。