2014年11月に6年ぶりに本帰国して、地域を散策していたときにとっさに撮った一枚のためiPhoneで写したもの。
このあたりは品川区御殿山といってソニー創業の地の一つで、長らくこの前の通りはソニー通りと呼ばれてきた。2010年あたりまでは、複数のソニー関連の工場やオフィスビルが建ち並んでいた。創業者の井深さんと盛田さんが亡くなった際も、社員がこの道路沿いに出て見送っている写真を見たことがある。ソニー通りを埋め尽くすたくさんの社員の姿が写っていた。
しかし、2010年移行の不景気や港南口に出来た新本社であるソニーシティ移転に伴って多くは売約され今は立派なマンションに変わっている。
ちょっとした後悔は、このコンパクトなグローバル企業の本社の一番いい顔をちゃんとしたカメラで撮り逃したことである。それは、やはりこの反対側の端側にある看板とともに撮りたかった。長らくの海外生活からようやく戻って、次の仕事やら、知人と近況報告したり、なんとかかんとかしているうちに、本社ビルは取り壊されてしまっていた・・・。
どうしてそんなにこの建物に思い入れがあるかと言うと、かつて新卒で入社した会社だったからだ。入社前に、実家から上京した両親を連れて、春から入社する会社をお披露目したのだった。僕は、幼少のころから家電好きで特にオーディオ関連やカメラが好きだったから、とても嬉しかったことを覚えている。
採用面接は、この斜め前にあった2号館で受けた。履歴書に写真を貼らずに、早く着いて貼ればいいやと思いきや、品川駅から御殿山にある2号館は遥かに遠く、開始時刻ちょうどに面接はスタートし、面接中に淡いピンクのシャツをノーネクタイで着ていた面接官が写真をノリで貼ってくれるという非常事態であった。そんな失礼な若者の話を熱心に聴いてくれた(しかも落とさず!)、ソニーのことを僕はもっと好きになったのだった。
この文章を書いている2019年1月時点、まだ旧本社の土地は工事中である。もちろん、本社ビルに入ったことなど数えるほどしかなく、僕には縁の薄い建物ではあったけれど、青春のいい思い出を象徴する場所の一つなのである。