2013年に留学して写真を学んでいた時、二学期に一学期に使ったのとは違うカメラやアプローチ方法を使ってミニプロジェクトをやってみようという課題があった。
なれてしまった方法を一度離れて、身体や脳の違ったところを刺激しながら物を見て、考えて、つくっていくというのは新鮮なことだと思った。
今年もやってみようということで、デジタルばかりを使ってきた僕にしては珍しくアナログのカメラを使ってみることにした。
中古のカメラ屋をめぐって探したのが、中判のHasselblad 500C/M。新宿のアルプス堂で出会った。1983年スェーデン製である。電気のいらない機械式カメラを買うのははじめてだった。値札に128,000円とある。かつては、僕のようなユーザーが手出しできないクラスのもっとずっと高価なカメラだった。
一つの被写体によりじっくり味わい、各プロセスを丁寧に何度も何度も対象を見ようと思って、それにはこのカメラかなと思って決めた。ある映画で、いい道具に出会って惚れ込むと仕事に妥協ができなくなる、というのを聞いた。ものとして美しく、そして艷のある動作音。まさにこのカメラがないとはじまらない、という実感を得ていた。