東ロンドンのElephant and Castle(エレファント・アンド・キャッスル)にあるLondon College of Communicationの校舎Tower Blockから。当時、僕はこの学校の修士コースに通っていた。座学やチュートリアルという5〜6人の小さなグループによる教師との作品を巡る批評の場は、この高層の教室で行われることが多かった。
今で言うところのタワーマンションであろうが、かなり古いものだった記憶があり、調べてみると1962年に建てられたとある。2022年に向けて新しくなるとあるので、もし次に訪れることがあればすっかり町は変わっていることだろう。
そもそも、Elephant and Castleは、僕が通学していたとき(2011〜13年頃)は、とても美しい町とはいえず、交差点が立体になって薄暗いトンネルを行き来しないと渡ることが出来ず、しかもホームレスやスリが多いということで警戒が必要な安心できる町ではなかった。実際、iPhoneをひったくられた女性が大声で助けを求めるのを見たことがある。更に10年以上前は、もっと危険だったらしいけれど、僕のときはそこまでではなかった。しかし、この5年ほどでその地下はなくなりラウンドアバウトと言われる英国のぐるりと廻るタイプの交差点も無くなった。そうそうこの地はチャップリンの出身地としても有名で、地下道に壁画があったものだった。そして、もともと治安の悪化の温床ともいわれた古いカウンシルフラット(公営住宅)が取り壊されて、今では町の雰囲気も住まう層も大きく変わっていると住人から聞いている。
2011年8月にはじめてこの近辺にあるWaterlooにあるフラットを借りて住み始めた。徒歩15分もあれば大学まで通えるので便利だと思ったが、はじめの一週間は、徒歩で危険はないのだろうか?と不安を感じた。実際に歩いてみると、なんてことはなくて、途中に劇場や戦争博物館があったりして、歴史を感じる。ただ、やはりロンドンのセンターにある学校に比べると荒んだ町に見えた。そんな地上階での印象は、このタワー教室から眺める景色で一変する。
撮影したのは2013年1月。冬特有の白い靄がかかった夕暮れ時。少しずつ増えてきた高層ビルはあるももの、多くは依然低層のフラットで景観も整っている。ビッグベンの鐘の音が毎時間聞こえてくる下町の時間を堪能するにはよい場だった。