2011〜14年2月までロンドンに留学した。そのとき3つの家に暮らしたが、一貫していたのはテムズ川沿いであったことだ。東側2回、西側1回のフラットに住んだ。
短期滞在だと、ガイドブックに載っている場所を回るものだが、いざ暮らしてみると暮らしの中に名所があることに気づく。その一つはテムズ川の砂浜であろう。
テムズ川は、激しく潮の満ち引きがある。国営放送BBCのWEBに潮の情報もあるが、例えばこの写真の近辺ロンドン橋付近では満潮時6.6mで引き潮時0.8mとその差5.8mもある。満ちているときは防波堤に打ちつける波が通路まで来ることだってあり、若干恐怖すらある。
一方で引いているときは穏やかで、砂浜が出てきて散策できる。読書やBBQを楽しむ人もいるし、遺跡発掘をしている人だっている。どうやら大昔の刀剣やコインなんかお宝が出るみたい。
僕が最後の1年半ほど暮らしたのは、Rotherhithe(ロザハイス)という旧港町の近くだったので、船着き場の跡が姿を現すのを見ては歴史を感じたものだった。川沿いに建つフラット(アパート・マンション)は、かつての倉庫をおしゃれに改築したものだったりする。当時のクレーンを飾りとしてそのまま備えているフラットは、実に趣がある。
ランニングのコースとしても最適で、視界が広がる風景や、潮がいろんなものを循環させているようで清々しい気分だった。
道すがら何件かのパブがあって、そこでビールを飲みながら川を眺めていると、ときどき豪華客船が通過したりして、華やいだ。ただ、暮れていくのを眺めているのも、最高の日常にある贅沢だと思ったものだった。
テムズから一本中の道に入れば、そこは中世の町並みが色濃く残っている。ほんの50年も昔、港町として船乗りたちの街だったという。今では、その面影は地名と倉庫の姿をしたフラットくらいにしか見ることができない。
ロンドンに行きたいなあと思うとき、このテムズ沿いの風景を真っ先に思い浮かべている。そのくらいいい場所だ。
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