2025年を振り返り新年をお迎えする

年末の振り返り

年末の振り返りをしたいとは思っていましたが、なかなか捗りませんでした。

一年の中には、事業年度や新年度、誕生日など、振り返るタイミングがいくつもあります。そのため、新年という区切りがどれほど意味を持つのか、少し懐疑的に感じていたからです。

ただ、8月に一度振り返りを書いてから、すでに4ヶ月ほどが経っています。そう考えると、元旦はやはり悪くない区切りとも言えます。

まずは、今年もっとも多くの時間を使ってきた博士課程の研究についてです。

レビュー論文のその後

2回続けて査読で落ちていたレビュー論文を、この年末に思い切って感情研究のレビュー論文を専門とするジャーナルに投稿しました。

レビュー論文とは、特定の分野の先行研究を整理・統合し、新たな理論的視点や仮説を提示するタイプの論文です。博士課程の学生が単著で書く事例は、あまり多くないように思います。考えてみれば、その分野に深い経験を持つ研究者が執筆するのが一般的ですよね。

それでも私は、自分の博士研究の「目次」にあたる部分を、このレビューで一度整理したいと考えていました。その成果を論文という形でまとめた、というのが今回の位置づけです。

投稿した海外ジャーナルは、相対的にレベルが高いため、不採択になる可能性は十分にあります。それでも投稿したのは、いったん区切りをつけることで、この論文への執着から気持ちを切り替えられるのではないかと思ったからです。

このレビュー論文を最初の投稿論文として選んだ経緯については、8月のブログに書きました。国内誌への投稿は結果的に不採択となり、もともと英語で書いていたこともあり、海外ジャーナルへの投稿を検討することにしました。

調べてみて改めてわかったのは、心理学系ジャーナルにおけるレビュー論文の採択枠は、想像以上に限られているということでした。

メジャーな心理学系ジャーナルでは、約10,000本中35本しかレビュー論文が掲載されておらず、原則としては実証研究が奨励されています。なかなかハードルが高いということです。

そのため、今回投稿してみて、それでも難しそうであれば、このレビュー論文はいったん脇に置き、別の実証論文の執筆に集中するつもりです。実証研究を重ねていく中で、レビュー論文で補強した方がよい部分が見えてくるのでは、とも思います。

心理学実験の末に

今年は、初めてアカデミックな心理学実験を自分で計画し、実施した年でもありました。

私は修士課程までは社会学系で学んできました。社会調査を通じて、社会のある姿を明らかにするという手法に慣れてきたため、心理学のように刺激を与える介入を設計することには、正直あまり馴染みがありませんでした。

仕事でマーケティングを担当していた頃には、新製品企画のために、刺激を仮想消費者に提示する実験を行ったこともあります。ただし、それは学術研究のように、厳密な検定による妥当性や信頼性を求められるものではありませんでした。

心理学実験の経験が乏しい中で、所属先の大学院の先生方や、文化心理学を専門とする先輩博士であり友人でもある方からの助言は、非常に大きなものでした。方法論の細部を確認しながら進められたこと自体が、貴重な経験だったと思います。特に、常に私より少し先を進んでいる友人の博士からの助言には、何度も助けられました。そのような中で予備実験を1回、本実験を1回実施しました。

研究では、2026年はこれまでに蒔いてきた種から、小さな花が咲くことを願っています。

仕事との距離感について

一方で、2025年は、仕事への向き合い方について、少し立ち止まって考える必要のある年でもありました。

依頼を受けた仕事を一生懸命に丁寧に行うという点については、これまでと変わらず取り組んできました。ただ、研究と実務が、どこか切り離されたまったく別のもののように感じられる期間が、長く続いていました。

無理に統合すべきではないとも思っていましたが、最近は、もう少し研究と仕事の接点を意識し、両者のあいだにシナジーを生むような取り組みを、自発的にしてもよいのではないかと考えるようになってきました。

2026年は、仕事と研究が融合することで、新たな価値を還元できることに、もう少し意識的でありたいと考えています。たとえば、研究手法の多くは、実務のアプローチをサイエンス寄りに強化し、さらに、説得力や納得感を高めるうえでも、活用の余地があるように思います。斬新な切り口を発見するのに役立つか、については手法面でのつながりというより、今の研究内容が中長期的に仕事に発展していく可能性も妄想は広がります。

仕事においては、サイエンスの慎重さが、時にコストや意思決定のスピードに見合わないこともありますが、その匙加減を調整できるのは、両方の視点を行き来してきた自分ならではの強みになりそうです。実務では、一期一会の挑戦的な仕事に出会えることを願いながら、次の一年に新たな思いを託したいと思います。